イベント・メディア情報

フォスタリング

2020.07.08 更新

日本財団助成 フォスタリングソーシャルワーカー専門講座 in 立命館大学 受講生募集【NEW】

「育ての親という生き方」をささえる里親支援のスペシャリストに

2016年6月の児童福祉法の改正、2017年8月の「新しい社会的養育ビジョン」など、社会的養護の子どもの家庭養育を促進するという目標が掲げられました。この政策を実効性あるものにするためには、地域における条件づくりこそが大切です。

本講座は、対人援助分野で教育・研究実績のある立命館大学(人間科学研究所社会的養育プロジェクト)が日本財団の助成を受け、社会福祉、家族療法、心理臨床、社会病理などを統合した関連領域の知識と国内外の先進的な理念や実践を学び、人間理解力を身につけた思慮深く行動力のあるフォスタリングソーシャルワーカーを養成します。 昨年度は多数の応募をいただき20名の1期生を迎えて講座を行いました。インタラクティブな学びの場に最初は戸惑う受講生も多かったものの、実践経験を活かし、それぞれの現場の状況を共有しながら学びを深めることができました。

また、2月のオーストラリアへのスタディツアー(5日間)には約半数の受講者が参加し、長年フォスタリングソーシャルワークを実践している現地で多くの学びを得ました。

立命館大学フォスタリング・ソーシャルワーク専門職講座では、今年も受講者を募集します。今後の社会でより重要性を増す「子ども中心のフォスタリング・ソーシャルワーク」の先駆者・実践者になる人、特に各機関または地域のリーダーとして里親支援を向上させることできるやる気のある人材を広く募ります。

応募は<8月23日>まで。詳細はURLをご参照ください。
https://fosteringsocialwork.com/

 

 

 

2020.07.08 更新

⽇本財団助成 NPO法人キーアセット (協力:日本福祉大学 )によるフォスタリングソーシャルワークのための「協働関係構築講座」受講生募集【NEW】

里親支援にアクションを起こす!”協働のチカラ”講座 受講生募集
ケアワークとソーシャルワークの協働関係を構築し、里親養育の質の向上を目指す

 

NPO法人キーアセット (協力:日本福祉大学 )による研修事業が、日本財団の助成で始まりました!
里親支援専門相談員、児童相談所職員、フォスタリング機関職員の方々。その他、里親支援に関わるソーシャルワークに従事する方やこれから取組む方へ。
里親養育の質の向上には、だれかが一人で頑張るのではなく、ケアワークとソーシャルワークの「協働」が必須です。
また、様々な機関との「協働」も同様に、大切です。
そのような「協働」関係において変化を起こしたい方が、実践に繋げるための講座です。
講座はzoomなどを活用しながら行われます。コロナウイルスが蔓延し厳しい状況下ですが、こんな時こそ、次につながるためのチカラをつけませんか?
応募は<9月24日>まで。詳細はURLをご参照ください。
https://fosteringtogether.jp/ 

2020.05.05 更新

スコットランド子ども若者コミッショナー ブルース・アダムソン(Bruce Adamson)氏インタビュー 「子どもの権利を守る、 それは世界でもっとも素晴らしい仕事です」【NEW】

<シリーズ・児童福祉の新時代へ④>

~過渡期を迎えた日本の社会的養育
「新しい社会的養育のビジョン」の実現へ向けて~

「子どもの権利を守る、
それは世界でもっとも素晴らしい仕事です」

この人に聞く!スコットランド子ども若者コミッショナー
ブルース・アダムソン(Bruce Adamson)氏インタビュー

国連子どもの権利条約が制定され30年、日本が批准して25年が過ぎましたが、日本において子どもの権利が守られ、子どもの声を聞いているのかといえば、まだ途上であると言わざるを得ないでしょう。「新しい社会的養育ビジョン」でも、子どもの権利を守る制度の構築の必要性が指摘されています。こうした中、日本財団では2019年10月に子どもの権利のあり方について法律や制度について研究会を発足し、子ども基本法の制定や、子どものSOSを受け止める子どもコミッッショナーの設立などを目指して議論を行っています。この研究会の一環として、2019年12月にスコットランドの子ども若者コミッショナー、ブルース・アダムソンさんを招聘しました。子どもの権利を守るということはどういうことなのか、改めてインタビューのお時間もいただき、ブルースさんのお仕事について、スコットランドでの取り組みについて、お話をお聞きしました。

(聞き手/日本財団 国内事業開発チーム チームリーダー高橋恵里子)

◇弁護士から子どもコミッショナーへ

 ―国連子どもの権利委員会は、子どもの権利条約に批准した国に対して、政府から独立して子どもの苦情申し立てを受け、調査し、救済することができる、子どもコミッショナー(子どもオンブズマンともいう)の設置を求めています。ヨーロッパでは、すでに43もの国レベルの子どもコミッショナーが設置されていると聞いています。ブルースさんがスコットランドの子ども若者コミッショナーになられたきっかけは?

ブルース 私は元々弁護士なのですが、以前はニュージーランドで子どもの法務関係の仕事をしていました。スコットランドでは、2003年に子ども若者コミッショナー制度が創設され、初代コミッショナーが任命されましたが、私は彼の法務アドバイザーとして仕事をすることになったのです。

その後、国際的な人権委員会の仕事に関わるようになり、三代目のスコットランド子どもコミッショナーを探す時期になって、ぜひやりたいと思い、申請をいたしました。審議の結果、私が2017年から子どもコミッショナーとして選任されました。任期は6年間ですが、私にとってこの仕事は世界で最も素晴らしい仕事だと、日々感じています。

―世界でいちばん素晴らしいお仕事、その素晴らしさを教えていただけますか?子どもコミッショナーは、具体的にはどんな仕事をするのでしょうか。

まず、日常的に子どもたちと一緒に活動できることです。子どもたちと木に登ったり、川で遊んだり、部屋でレゴを作ったり。このように遊びを共にするなかで、子どもたちがどんな状況にあるのか知ることができます。もし、サポートが必要な子どもや家族がいれば、彼らに何が必要なのかわかります。こうした情報を得たうえで、しかるべき立場にある人たち、例えば議会や地域当局、警察などの機関に出向いて、子どもの声を伝えることができます。そして、困った状況をより良く変化させる働きかけができるのです。

子どもたちと親しく交流しながら、制度的な変化を起こすパワーを持っている。そういった意味で、子どもコミッショナーはすばらしい仕事であると感じています。

―変化を起こすパワーは、どのように使われるのでしょうか?

しかるべき権限を持っている機関を通して変化を促す、ということです。コミッショナー制度はスコットランド議会が設置したものですが、重要なのは政府に対するコミッショナーの独立性をしっかり担保している点です。コミッショナーには調査する仕事もありますが、コミッショナーの要請があれば、役所は書類を提出する義務があり、ヒアリングを断ることもできないので、込み入った調査活動にも取り組むことができます。コミッショナーの権限の中に調査権が認められており、さまざまな公的機関に対して権限を持って情報を収集することができるのです。

また、コミッショナーには調査を報告する役割があり、報告内容を踏まえて、さまざまな提言を行います。こうした提言を通して、法律や政策、慣習などを変化させていく力になっていくのです。さらに、コミッショナーには訴訟ができる権限もあります。子どもの権利が侵害されている状況があれば、私がコミッショナーとして、訴訟を起こすことも可能です。

 ◇子どもの権利を監視する機関が必要

 ―日本ではまだ、このような子どもコミッショナー制度が必要であるという認識はありません。なぜ必要なのでしょうか?

国連における「子どもの権利をどう守っていくか」という議論のなかで、行政組織を監視する機関の存在が非常に有効であると考えられてきました。国連の児童権利委員会では、こうした独立した機関を使って、子どもや若者の権利を守っていくことの重要性が明確にされました。

国家は子どもの権利を守っていく責務がありますし、市民社会も子どもの権利を守っていく役割があります。こうした状況のなかで、コミッショナー制度は、法律で定められた権限を用いて、行政の活動を監視する役割を担っているのです。

なぜこの役割が重要かというと、子どもは発達の過程にあるため、声をあげにくい弱い存在なのです。家庭内での虐待や、学校、児童福祉施設、少年院などのあらゆる場所において守られなくてはならないことから、コミッショナーが彼らの権利を守っていく役割を果たすのです。

―日本では連日、児童虐待が報道されています。コミッショナーは虐待を防ぐためにどのような役割がありますか?

子どもの安全を守るのは国家の責務です。これがまず前提としてあります。そのうえで、コミッショナーがスコットランドにおいてどのような役割を果たすのか。まず法律や政策、慣習を必要に応じて見直し、変えていくということです。こうした活動の中で重要になってくるのが、意識の向上と改善です。また、国家におけるさまざまな行動を監視していくことです。

ただし、コミッショナーは個別の虐待事例には関わっていきません。私たちは個別のケースを見ながら、どういった状況があるのか、どういったことを学ぶべきか、ということを鑑みて、より大きな法制度や政策、慣習などに変化を促すのが役割です。個別のケースに対応するのはどちらかというと、児童や家庭に関わる専門家たちが取り組みます。

 ◇オフィスに届く子どもたちの声

 スコットランドの子ども若者コミッショナーのHPには、子どもが意見を表明しやすいように、電話番号などが記されていますね。連絡が入ったどのように対応するのです

 はい、子どもコミッショナーのオフィスには、電話やメールなど、さまざまな形で子どもたちが連絡できるようにしています。虐待の情報に限らず、子どもを守るために、緊急性のある場合はその情報を地域の当局者に伝えます。

一方、さほど緊急性がない場合は、子どもと対話しながら長期的な計画を考えてから、地域当局に連絡をいたします。このように、さまざまな形で子どもたちから相談の連絡が入ってきたら、その解決に協力すると共に、その情報が他の子どもたちにも役立たせるようにしています。

 

―多くの子どもの声に対応するのは大変だと思いますが、スタッフや予算はどれくらいですか?

スコットランドの人口は550万人、子どもが150万人いるなかで、確かにコミッショナー一人だけで対応するのは難しいです。我々のオフィスには15人のスタッフがおり、年間の予算は130万ポンド(約1憶6000万円)です。オフィスは首都エジンバラに一か所。スコットランドには島も多く、全体の地理を考えると、離れた地域の子どもたちのニーズに対応するために、地方オフィスを設立する必要があります。現在スコットランド議会に地域オフィスの必要性を訴えています。スコットランド全土の子どもの声を聞くために数カ所は必要だと思っています。

 ◇コミッショナーの活動の事例

――これまで関わってきた中での印象深かったご経験は?

すべての子どもが私にとって特別ではありますが、二つの例をご紹介したいと思います。

一つは自閉症で言語障害を抱えた男の子の例です。彼が通う学校では、彼の特別なニーズに対して理解がありませんでした。彼のお母さんは私がコミッショナーになる前から、このことについて懸命に啓発をしていましたが、なかなか聞き入れられませんでした。そのため、身体的に拘束をしてしまってケガをさせるなど、間違った対応が続いていました。

私がコミッショナーに就任してからすぐお母さんから連絡をいただき、この件について調査をしました。そして、将来この男の子のような状況を作らないように、法律の改正に至りました。また、お母さんから同じような状況に置かれた他の子どもたちの親を紹介していただきました。以前はこうした親たちは孤立しがちでしたが、メディア展開も活用した今回の取り組みによって、家族のネットワークを作ることもできました。

二つ目の例は若者の運動にかかわるものです。とても活発な9歳の女の子から相談がありました。彼女は木登りが大好きでした。しかし、女の子のために作られている洋服は、体を動かすのに適した活動的なものが少ないと感じていました。男の子の服は活動的なものが多いのにもかかわらず。

そこで彼女はその要望を書いた手紙をアパレル会社に送りました。しかし、何の反応もありません。そこで彼女は直接電話して「なんで答えないのですか」と聞きました。すると、「あなたの手紙は受け取っていませんよ」と言われてしまったのです。そしたら彼女は「ここに手紙のコピーがあるので読みます」と、実際にその手紙の内容を読み上げ企業側に伝えました。そしたら今度は企業側の幹部の方から「ぜひ当社に来てほしい。女の子にとって活動的な洋服を一緒に作っていきませんか」という話になりました。

彼女は12歳になりましたが、今では男女平等について、環境保護の問題についてなどのさまざまな運動に参加しています。彼女のように子どもであっても、変化をもたらす力になるということを印象づけたケースになります。

―さまざまな相談や問題があるなかで、何を優先して取り組まれるのですか?

そうですね、どの問題にもアクションは必要ですので、どれを優先的に取り組むのか決めていくことは、私たちにとって難しいことの一つです。身体拘束を受けていた男の子の場合は緊急性があると判断して、法律を変えるなどの対応を急ぎました。スタッフもこの件で動き、メディアや議会を巻き込んで変化を促すようにしました。一方、例えば子どもの貧困の問題などは、より長期的な態度でしっかり状況を把握して、制度を変えていく必要があります。

考え方としては、権利侵害の度合、影響を受けている子どもたちの数などを考慮しながら、優先順位を決めていくことになります。

 ◇子どもの権利はわがまま?

―日本では子どもへの体罰を禁止する法律ができました。スコットランドも同じような法律ができたとお聞きしています。日本ではしつけとの兼ね合いで親が慌てるようなこともありますが、アドバイスはございますか?

 スコットランドの親世代にも同じような状況があります。しつけの問題になると、親たちの反応が険しくなるのです。ヨーロッパで体罰禁止の法律を作った国としては、スコットランドはいちばん最後なってしまったのですが、このように法律を変えて子どもを暴力から守ることはとても重要なことです。

もう一方で大切なのは、PRキャンペーンを展開していくことです。親世代を中心にさまざまな形で理解を深めていただき、サポートを提供して、しつけのあり方には別の方法があるということを示していく啓発キャンペーンが必要です。

暴力が子どもに及ぼす影響について、それが小さいものであれ、大きいものであれ、「よくないことである」という理解を広げていく必要があります。親が体罰を与えてしまうとき、おそらく大きなストレスを感じており、自分自身でそれを制御できない状況に陥ってしまい、体罰に至っているのだと思います。「体罰は子どもを育てる良い方法だからする」などという人はいないのです。体罰を与えたことで後ろめたい気持ちになる親がほとんどだと思います。

ですので、我々は法律を制定する一方で、親のサポートも重要視しています。しつけの在り方を変えていくための方法について検討する親のグループなどが、こうした取り組みを展開しているところです。

神戸市で開催された日本子ども虐待防止学会での基調講演

また、小児科医や精神科医の話などから、体罰における子どもたちの発達過程への影響についてエビデンスが集まってきています。こうしたエビデンスによると、体罰がいかに子どもの発達にとって悪影響を与えるかが理解できるということです。

例えば、喫煙、車に乗るときのシートベルト着用や飲酒運転などのような問題が参考になります。これらの問題は、以前の世の中では問題ない、あるいは軽微な問題とされていたものですが、その弊害が個人はもちろん社会全体に悪影響を及ぼすというエビデンスが集まってきました。人々はこれを理解して、考え方も変化させていったわけです。

ですので、体罰も同じように、リスクに関するエビデンスが集まり、リスクへの理解が広まり、これまでは問題がないとされていたことを切り替えていく力になる、と考えられると思います。

―子どもの権利擁護というと、「子どもにわがままを言わせる」と認識されることも少なくありません。

スコットランドでも同じ反応はあります。子どもの権利条約ができてから、国際的にも「子どもが権利の主体である」という認識の変化が起こりました。それまでは、子どもは単なる保護の対象、慈愛の対象でした。しかし、子ともが家族環境のなかで幸福である権利を定めて、この権利を守るのが国家の役割であると規定し、家族と子どもをサポートしていくという考え方になったのです。

子どもの権利の中で重要な「子どもの声を聞く」というのは、何でもかんでも好きなようにやらせるということではなく、まずは子どもの声を聞いて、子どもの年齢や発達段階を鑑みながら、意思決定に反映させていくということです。まず声は聞きますが、それが子どもにとって利益をもたらさないのであれば、それについて子どもには理解してもらう、という考え方です。

子どもの権利条約では、親が子どものしつけや発育において責任を持つことを定めていますが、国家はそれを可能にするために親へのサポートを提供していく。こうした構図になっています。ですから、子どものわがまま、例えば「子どもがポケットマネーを持つ権利がある」のではなく、国家が家族をサポートすることによって、その家族のなかで十分な金銭的な生活ができることを定めている、ということです。

同様に、「宿題をやらなくていい」という権利があるのではなく、国家が子どもたちに充分な教育を提供することによって、子どもが自ら学び持っている力を発揮する必要がある、という関係性です。

国が住宅や教育環境を整えるなどさまざまな形で家庭を支援していくことは、子どもにメリットがあり、子どもがきちんと成長していける。それがやがて社会全体の利益につながるという考え方です。子どもの権利擁護は子どもに利益をもたらすことが、親たちにも理解され始めています。この理解が進んでいるので、子どもの権利条約を国内法に適用することに向けてさまざまなキャンペーンを展開するという状況に至っています。

子どもの権利条約には何か難しいことが記載されるわけでありません。条約は親に制限を加えるものではなく、むしろ国家に対して、子育てをしている家庭に支援していく責任があるということを定めているものです。

◇国際標準となる子どもの権利の影響評価

―ブルースさんは欧州こどもオンブズパーソンネットワークの次期会長に就任されるご予定ですが、次期会長ということですが、抱負をお聞かせください。

欧州子どもオンブズパーソンネットワーク(European Network of Ombudspersons for Children)は欧州評議会に加盟している各国から43の子どもコミッショナーが集まって作られた、すばらしいネットワークです。多様な経験の中から最もよい手法について共有したり、国際的な標準を作ったり、という活動を展開しています。

これまでメンタルヘルスやデジタル環境などの問題について取り組んできた実績がありますが、私が次期会長として取り組んでいきたいのは、「国際標準となり得る子どもの権利の影響評価」というテーマです。

そのためにワーキンググループを作り、そこで決議を得て、国際標準の形成につなげていきたいと思います。2020年9月にはオンブズパーソンネットワークの会議をエジンバラで開催する予定です。会長職はたいへん名誉なことです。来年9月以降、今後のオンブズパーソンネットワークの発展に力を尽くします。任期は4年ですが、任期3年目なりますと、時期会長の選出も控えておりますので、その指南役も勤めていきたいと思っています。

―子どもの権利の影響評価とはどのようなものですか?

子どもの権利の影響評価とは、政策立案者が活用できるツールの一つです。子ども権利委員会、一般意見書第5号において「子どもの権利条約の実施に関する提言」の中で、こうしたツールの活用について書かれています。

世の中では、子どもの権利に基づいてさまざまな取り組みがなされますが、その際により良い意思決定ができるツールです。どのような意思決定がされ、それが子どもにどう影響を与えていくか、政治的、経済的、文化的にどう影響が出ているか、こうしたことを評価するツールです。このツールを使うことによって、政府あるいは地域当局においてなされる、予算や企画などのさまざまな意思決定が、子どもの権利を踏まえた、より良い意思決定がなされる効果が期待できます。

子どもの権利の影響評価については、長年議論されてきました。さまざまなモデルがありますが、ベストなモデルはまだありません。従来のモデルは、単に書式を揃えているだけで具体的な有効性のないお役所的なものであったり、専門的過ぎて活用できなかったり、あるいは専門性が不足していたり、というものです。ですから、国際標準となりうる有効性のあるモデルを、オンブズマンネットワークを通して作り、より良い意思決定がなされることを目指します。これは画期的な取り組みだと思いますので、力を尽くしたいと思っています。

 ◇日本へのアドバイス

 -日本は子どもの権利条約に批准して25年を経ましたが、子どもの権利を包括的に定めた法律はまだありません。子どもコミッショナーについても、川西市の子ども人権オンブズパーソンや川崎市の子ども権利委員会など、地方自治体レベルでの取り組みはありますが、国レベルの子どもコミッショナー制度の必要性の議論は高まっていません。日本財団では現在、子どもの権利を守るための研究会を立ち上げて勉強しています。ご助言をいただければ幸いです。

日本で立ちあがった研究会、今回そのメンバーにお会いして、彼らの仕事に感銘を受けたところです。日本は人権の分野で世界的に活躍されている人物がいらっしゃいます。子ども人権委員会の大谷美紀子氏もそうですし、今回の来日で素晴らしい専門家の方々にお会いしました。私がそうした専門家の方々にアドバイス差し上げるまでもないですが、スコットランドの経験から少し申し上げます。

スコットランド議会が子ども若者コミッショナー制度を設立したとき、この制度がいかに市民社会に良い影響をもらすかということが強調されました。より良いコミッショナー制度を作ることによって、より良い意思決定がなされて、それによって、子どもの権利が守られ子どもに利益がもたらされる。こういった考え方でした。カレン・ギロン議員は最終答弁で次のように述べています。

「独立した、非常に重要で、影響力の大きいポストを設けることにより、私たちは本当の変化をおこすチャンスを手にしました。これこそ、私たちが国会議員として子どもや孫に残してやれる、最も意味のある遺産です。」

スコットランドでは、子どもの権利条約を国内法に適用するという動きがあり、2021年5月を目指して進めています。きちんとした法律がない状態では、児童の権利を守っていくことは難しいからです。

日本で子どもコミッショナー制度を作られるのであれば、われわれスコットランドのコミッショナーはもちろん、世界のコミッショナー、パリ原則、子どもの権利委員会の一般意見第2号、こうした世界のスタンダードを参考にしていただければと思います。また、法律については、子どもの参加を得ながら進めていくべきだと考えます。

-ブルースさんがこの仕事をなさるうえで、尊敬する人物などはいらっしゃいますか?

たくさん居ます。例えば、セーブザチルドレンの設立者であるエグランタイン・ジェブ氏が成し遂げられたことに敬意を表しています。また、国連の子ども権利委員会の大谷美紀子氏も、この問題についてリーダーシップを発揮されている方で、とても尊敬しています。

児童福祉に尽力されている方々の中には、他にも素晴らしい人物が大勢おられますが、私はスコットランドにいる、日常的に会っている子どもたち対しても、大きな尊敬の念を抱いています。先日、10才になる4人の子どもたちを連れてジュネーブにある国連に行ってきました。彼らは貧困問題に関する素晴らしい発表をしました。また国連の拷問禁止委員会で17歳の子が堂々と話してくれて感銘を受けました。そう、私にとって子どもたちは尊敬すべき存在、常に私にインスピレーションを与えてくれる存在なのです。

―本日は貴重なお話をありがとうございました。

新しい社会的養育ビジョン(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/0000173888.pdf

2020.04.24 更新

日本財団ジャーナル記事掲載:【連載】特別編 小池百合子東京都知事よりメッセージ 2020年4月24日【NEW】

連載【里親になりたいあなたへ】

関連リンク

2020.04.03 更新

養子当事者インタビュー③ 「真の意味で子どもの権利を守る制度であるために」【NEW】

<養子当事者インタビュー②>

当事者の声から考える特別養子縁組制度のこれから

 真の意味で子どもの権利を守る制度であるために

特別養子縁組の当事者へのインタビュー、第3回は20歳代前半の男性Mさんです。2歳半のときに乳児院から家庭に迎えられたMさんは、幼少期から聞き分けの良い子どもだったそうですが、父からの厳しい教育や母からの過干渉など、家庭環境はつらいことが多かったと振り返ります。ご自身が両親との関係に悩んだことを、これからの特別養子縁組制度の運用に生かしてほしいという思いで、講演活動もなさっています。これからの特別養子縁組家庭のサポートに何が必要か、当事者の視点で語っていただきました。

(聞き手/ハッピーゆりかごプロジェクト 新田歌奈子)

 

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「実子同様」に育てるという意味

―ご両親とは現在どのようなご関係ですか?

私は大学を卒業して就職し、一人暮らしをしています。実家には年末年始は帰ることにしていますが、普段はほとんど連絡を取りません。私が育ってきた環境は、正直に言って安心できるものではありませんでした。父と母とは今でも折り合えていません。両親は私が特別養子であるということを認めることができないまま、「実子」として育てたかったのだと思います。

特別養子縁組という制度は、あくまで「子どもの権利」を前提に、「実子同様」に育てることができる制度であるはずですが、私の家の場合は、「自分の子どもがほしい」という親のための制度として機能してしまったのだと思います。

2歳を過ぎて乳児院から引き取られました。このことは、後に自分で調べて知ったことで、それまでは自分が養子であることはまったく知らされずに育ちました。周囲にも徹底的に伏せていましたし、母は「自分で産んだ子である」と思い込もうとしていたと感じます。母からも愛情は注がれていたと思いますが、それは過干渉ともいえる形で、私にとっては重苦しいことが多かったです。

父は一日中、私の勉強を指導していました。小学5年生くらいからは、理解できなかったり、間違ったりすると手が飛んできました。その恐怖感は今でも残っていて、友達が私の横で手を動かしただけで、「殴られる」という恐怖でビクビクすることがあります。

17歳のとき、私が勉強の問題が解けなかったことに対する怒りにまかせて、養子であると知らされました。その後、大学生になってから自分で戸籍を辿りました。私のことをサポートしてくださる方にも恵まれ、たいへん感謝しています。入所していた乳児院を訪ねて、職員さんとお話もさせていただきました。

振り返ると、幼少期の私の心の支えは祖父母の存在でした。小さいころから祖父母はとてもかわいがってもらいましたし、従兄弟たちとも仲は良かったです。祖父は他界し、祖母も記憶に困難を抱えていますが、特に祖母のことは大好きです。私の心が深く落ち込んだときも、祖母との思い出、祖母からの愛情が支えとなり、立ち直っていけたと思っています。

特別養子縁組を検討する際、祖父母が反対するケースもあるようですが、私にとって祖父母はかけがえのない存在でしたので、やはり祖父母の積極的な同意がある上で、進めていただきたいと思います。

私のように、両親との葛藤が強くない場合であっても、養子当事者は両親と血縁がないことに葛藤を抱えることはあると思います。そのような時期でも、祖父母に対しては、血縁うんぬんに捉われないで済むことが多いように思います。おじいちゃん、おばあちゃんという、核家族の一歩外にいる距離感で見守ってくれることは、養子当事者にとって貴重です。私自身、近くに祖母がいてくれたおかげで、家族の中で孤立せずに過ごせたと思います。

 特別養子の当事者団体が必要

―養子当事者として情報発信をなさっていますね?

大学生のときに、里子さんの団体でボランティアをしていました。私自身が特別養子だからという理由ではなく、一般のボランティアとしての参加していました。そのときに、里子さんたちには小さいころからこうした場があり、子ども同士のつながりもあり、学校ではない場所で話せる関係が作られている。いいなと思いました。そして、特別養子縁組にもこのような団体があるのだろう、私もその団体に入りたいと思って探してみました。しかし、特別養子の当事者団体はありませんでした。ならば、自分で団体を作りたいと思いました。

私自身も社会的養護を経験した若者の団体にも入っていますが、里親家庭や施設で育った方たちと、特別養子縁組家庭で育った私とでは、悩みの質が異なる部分も多く、同じ当事者団体としては共有しづらい話もあるように感じました。

こうした思いもあって、就職してから、休日を利用して講演活動を始めました。講演活動は、私の特別養子縁組制度に関する考え方や提言を発信すると同時に、特別養子当事者が経験を話すことで、同じ特別養子の方や関係者が集まってくれるのを期待しました。講演会にはこれから養子縁組を考えていらっしゃるご夫婦、養子縁組をなさった親御さん、研究者や支援者の方々など、さまざまな方が参加してくださっています。

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ネガティブキャンペーンはしたくない

―Mさんご自身のご経験をお聞きすると、制度の課題を考えていかなければならないと痛感します。

誤解してほしくないのですが、私自身は特別養子縁組制度のネガティブキャンペーンをしたいわけではないのです。私自身の経験については講演会ではできる限り、言えるところまで公表しています。その経験を伝えることで、これからの制度の運用のあり方を、より良いものにしていただきたい、という目的があってのことです。

当然ながら、私自身がこれまでの生活に不満がなければ、こうしたモチベーションにはならなかったとは思います。かといって、自分の不満を聞いてほしい、愚痴を聞いてほしい、というだけでは、この活動の意味はありません。話を聞いてくださった方から「かわいそうだったね」と思われて終わってしまってはいけない。

そのためには、私が経験してきたことやどのような感情を抱いていたかということを、自分のなかで整理したうえで、問題提起となるような形で伝えていく必要があると考えています。自分の中でも、その整理をするために試行錯誤しましたし、参加申し込みをいただいた方の背景を考慮した話をするために、直前まで資料も練り直しました。

実際、講演会を告知してみると、不妊治療をなさっているご夫婦がたくさんお見えになるということが分かりました。となると、私自身が感情をあらわにするような話し方はなおさら避けなくてはいけないと思いました。

 より良い発信の方法を試行錯誤

―当事者が発信することについて、気を付けていることはありますか?

いま、社会的養護のもとで育った子たちが、発信を始めていることは、とても貴重だと思います。ただし、その発信の仕方は、開催の場所によってもそれぞれ異なります。一つの小規模なサロンの中で発言するだけであれば、ご自分の経験や思いを吐露するだけでも、意味はあると思います。まだまだそれすら少ないのですから。

しかし、一歩踏み込んで、社会的養護の制度や施設の体制をより良く改善していきたいという意図を持って発信していくことも大切です。自分がおかしいと思う部分を変えたい、そのためにはどういう話し方をして、どういう人に伝えていけばよいか、計画を立てて進めていくことが大切だと思います。

私が思うに、若者が自分の子ども時代の経験を話すとき、話す機会を重ねれば重ねるほど、どうしても話を聞いてくれる方の顔色を見ながら、話す内容も変わってくることがあるように思うからです。

私が特別養子の当事者団体を作りたい理由の一つが、何か発信したい人の声が捻じ曲がって伝わらないようにしたい。聞いてくださる方への配慮はあっても、自分の気持ちに嘘はつかないで、脚色はしないで、自分の経験をどう伝えていくのか、ということに関しての方法を団体の中でも一緒に考えていければと思っています。

私自身、話を聞いてほしいというより、話を聞いてくださった方に、より良い制度のために動いてほしいということが、講演会を開く本来の目的です。特別養子縁組制度は、厳密には社会的養護の範疇ではありませんし、家庭に託すことができたという、成功例として捉えられていると思います。しかし、そこで育った子どもの中には、もっと制度がこうあってほしいという声なき声はあると思います。そのことを発信できる人はまだ少ないと思いますので、私が活動を通して発信していきながら、仲間を見つけて、協働していきたいと思っています。

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―ご自分の思いを聞いてくれる方はいましたか?

友達は、私が養子であることを知っても、すごく引くこともなければ、避けるようなこともありませんでした。話も聞いてくれました。とはいえ、友達に家庭での不満を話したとしても、相手も「人の親のことを悪く言いたくない」という気持ちもありますから、すべて理解してもらうのは難しいですよね。

なので、私も友達に家のことを相談することは少なくなりました。「学校に居る時や友達と居るときはその時間を楽しむ、そして家では感情のスイッチをオフにする」という日々が続きました。

それでも、急にいろいろな感情が溢れてきて、混乱しそうなときもありました。そんなときは、その思いを言語化しようと試みました。ノートにどんどん書き留めていきましたが、手書きのスピードが追い付かないと感じることもありました。今もブログなどで思いを発信していますが、内面にはその何倍も言いたいことがあります。こうした思いをどのように自分の中で整理していくか、という作業を常にしています。

―Mさんの幼少期にどういう支援が必要だったと思いますか?

最も大切なのは、やはり対話だと思います。私の両親は特別養子縁組であることも周囲に明かしていないうえに、一般の子育て家庭との交流も薄かったからです。養親同士、あるいは父親同士で何かしら話せる人がいることが大事だと思います。

同じ養親さん同士であれば、他の人には言いにくいこと、例えば「この子を養子だと思いたくない、自分の子だと思いたい」というようなことも打ち明けることができるのではないでしょうか。そこで解決策がすぐに出なくても、聞いてくれる人がいる、聞いてもらえるという環境があれば、自分の中でその気持ちを言語化し、整理していくことができます。そうすることで、いま自分がどのような状態にあるか理解することができる。それができれば、自分がどうなっていきたいかという道筋が見えてくる。そこで初めて、より良く変わっていきたいと思える気がします。

 不妊治療から休息期間を置いてほしい

―養子当事者として、これから養子縁組を考えている方へ必要なサポートは何だと思いますか?

養子縁組を考えているご夫婦は、私の講演会にも来てくださいます。決してハッピーな話だけではないとわかっていてお見えになりますので、養子を迎えた後のさまざまなことを真剣に考えていらっしゃる方々なのだと思います。

それを踏まえて、あえて申し上げたいのは、不妊治療をなさっているご夫婦が、特別養子縁組を検討するという流れが一般的であるように捉えられていますが、不妊治療において生じた心の傷の薬が特別養子縁組、ではいけないような気がします。それはある程度、別問題として捉えることも必要だと思うのです。

不妊治療において、身体的にも、金銭的にも、精神的にも負担を強いられている方が、それについての区切りをつけないまま、特別養子縁組に進んでいかれるのは心配なのです。特別養子縁組に向かう前に、不妊治療の傷をできるだけ癒せる休息期間といいますか、一定の時間が必要だと思います。それは私の母を見てきて切に思うことです。不妊治療の傷を癒す、ある意味で特別養子の子が身代わりのようなり、「実子同様に育つ」という、本来は子どものための制度である特別養子縁組が、実質的にそうではなくなってしまいます。

区切りのつけ方は人それぞれだと思いますが、特別養子縁組は不妊治療の延長線上にあるのではないということを理解していただきたいです。

私は現在、講演会などと並行して、養親さんやこれから特別養子縁組を考えていらっしゃるご夫婦と語り合う時間を設ける活動もしています。私の考えは、私の経験に基づいた個人的なものではありますが、当事者として「養親がこのような考え方をしてくれていたら良かった」ということを、お子さんを迎える前に知っておいていただければと思います。

―児童相談所やあっせん団体でもアセスメントはありますし、研修もありますよね。

もちろん、そうした研修に力を入れていただくことは大切だと思いますが、そこに養子当事者の思いや考察がどこまで反映されているかは再考の余地があると思っています。例えば、真実告知に関しては「3歳になる前までに、少しずつ」ということが定説になっていますが、「それさえやればよい」というような安心材料を提供するだけではないような研修であればよいと思います。

特別養子縁組家庭で育って良かったという当事者は、どういうところが良かったのか、あるいは嫌だと思った人のケースで、親はどのような行動を取っていたのか。私一人の物差しだけでなく、多様な当事者の経験から読み解いていくことが大切ではないでしょうか。

そのためにも、特別養子の当事者の仲間で団体を作り、子どもの立場から、養親さんや制度を作る方々、運用する方々へ届けていくために、活動を継続していきたいと思っています。

インタビューを終えて、、、、

Mさんのご両親は、実子として育て、養子であることを隠し続けようとしたとのことでした。「縁組後に真実告知などの支援があったとしても、うちの親は支援を受けなかっただろう。そういう親には縁組後の支援では遅い。縁組前にしか、養親の気持ちを変えられない」とおっしゃっていたのが印象的でした。縁組前のアセスメントや研修の重要性を改めて認識しました。
特別養子縁組の制度が出来て30年以上が経ちました。そのとき縁組された養子が成人し、自分の言葉で発信することがここ1~2年で増えてきたと感じます。今後、養子当事者の声が制度に反映されることを願います。特別養子縁組は子どものための制度ですから。

(日本財団 新田歌奈子)