イベント・メディア情報

子どもの家庭養護推進官民協議会 特別養子縁組 里親 養子縁組

2017.05.15 更新

6月1日 「子どもの家庭養育推進官民協議会 シンポジウム」を開催いたします

日時:
2017年6月1日(木)13時30分~15時00分
場所:
東京都港区赤坂1-2-2 日本財団ビル2F
定員:
100名、無料(事前申し込みが必要です)

昨年の4月に設立した「子どもの家庭養育推進官民協議会」では、2016年度事業として、国への政策提言や研修、ソーシャルイノベーションフォーラムへの参加、参加団体のイベントの後援など幅広い活動を行ってまいりました。平成29年度は下記のとおり総会に併せ講演会を開催しますので、ご参加いただきますようお願いいたします。

■主催:子どもの家庭養育推進官民協議会
■内容:
1)講演会 13:30~14:30
基調講演
奥山眞紀子(新たな社会的養育の在り方に関する検討会座長) 13:30~14:00
「改正児童福祉法と新たな社会的養育の在り方について」
指定発言
慎 泰俊(認定NPO法人Living in Peace代表理事) 14:00~14:10
「一時保護の現状と改善のための方向性について」
上鹿渡和宏(長野大学社会福祉学部教授) 14:10~14:20
「早期パーマネンシー保障に向けた、うえだみなみ乳児院パイロットプロジェクト」

2)各団体トップからのコメント及び政策提言発表 14:20~15:00
塩崎恭久厚生労働大臣よりご挨拶(調整中)
0fa8e26133510134e2b6df5c0fa245e3

 

 

※フォームにアクセスできない場合は以下のメールアドレスに

1)参加者のお名前 2)所属団体 3)電話番号 4)メールアドレスをお送り下さい。

問い合わせ先:子どもの家庭養育推進官民協議会事務局
E-mail : kanmin.jimukyoku@gmail.com  ※(a)を@に変えてご使用ください。

2017.05.15 更新

特別養子縁組実践研修~新生児委託とパーマネンシーについて~

日時:
2017年7月14日(金)9:30~16:30
場所:
きぼーる11階 中央保健福祉センター 大会議室1,2
対象:
児童相談所職員、里親支援専門相談員等、里親委託や養子縁組に関係する業務に従事し守秘義務を有する方
定員:
60名

6/12 定員に達しましたので募集を締め切らせていただきました。

2017年4月から施行された改正児童福祉法により、養子縁組里親が法定化され養子縁組の相談・支援が児童相談所の業務となりました。本研修は、新生児委託を含む特別養子縁組の実践や最近の調査結果などについて学ぶ場を提供することを目的とします。

共 催:日本財団、NPO法人CAPNA、ちばこどもおうえんだん

スケジュール(敬称略)
9:15~    受付開始
9:30~    司会:萬屋育子(CAPNA理事長)
主催者挨拶 高橋恵里子(日本財団福祉特別事業チームリーダー)
湯浅美和子(ちばこどもおうえんだん理事長)
来賓挨拶 田嶋要(民進党衆議院議員)
10:00~11:00 「乳幼児の社会的養育が家庭での養育を原則とする理由とそれを実現する方法について」
上鹿渡和宏(長野大学社会福祉学部教授)
11:00~11:30  養親体験発表
11:30~12:00  「千葉県における新生児委託の実践」
児玉 亮(千葉県中央児童相談所相談措置課長)

休憩

13:00~14:10「愛知県の新生児委託と特別養子縁組の実践報告」
柴田千香(愛知県西三河児童・障害相談センター愛知県里親推進員)
10分休憩
14:20~15:15 「民間養子縁組団体の実践と妊娠期からの支援について」
赤尾さく美(一般社団法人ベアホープ理事・助産師、全国妊娠SOSネットワーク理事)
15:15~16:00 グループワーク
16:00~16:30 質疑応答・アンケート記入

6/16追記
①昼食会のご案内
登壇者、参加者が集まり、食事をしながら交流ができる昼食会を実施します。
7月14日(金)12:00~13:00 お弁当代:1,000円

②懇親会のご案内
7月14日(金)17:00~19:00 参加費:4,000円
会場きぼーる周辺のお店を予定

①、②の代金は当日朝の受付でお渡し下さい。

6/12追記
定員に達しましたので募集を締め切らせていただきました。

 

 

 

※フォームにアクセスできない場合は以下のメールアドレスに
1)参加者のお名前 2)所属団体 3)電話番号 4)メールアドレス 5)昼食会の参加/不参加  6)懇親会の参加/不参加をお送り下さい。

20170714特別養子縁組実践研修ちらし.pdf

問い合わせ先:日本財団ハッピーゆりかごプロジェクト 事務局
E-mail : tokubetsu_youshi(a)ps.nippon-foundation.or.jp ※(a)を@に変えてご使用ください。

2017.04.27 更新

「子どもが家庭で育つ社会に向けて」ロジャー・シングルトン卿 講演 その③

日本子ども虐待防止学会 第22回学術集会 おおさか大会

2016年11月25日

日本財団 スポンサードセッション
「子どもが家庭で育つ社会に向けて」

英国 バーナードス元代表(CEO)ロジャー・シングルトン卿

「子どもが家庭で育つ社会に向けて」ロジャー・シングルトン卿 講演 その①より
「子どもが家庭で育つ社会に向けて」ロジャー・シングルトン卿 講演 その②より

◇ 建物に対する感情的な愛着

困難の中には、建物に対する感情的な愛着というものもありました。例えばとても美しい庭を備えた立派な建物、乳児院として使って欲しいと寄贈された建物もあり、寄贈者の名前を付けたものもありました。建物の閉鎖をするということは、資金提供者との繋がりを失ってしまうということも意味しました。街中の建物をデイセンターに転換するということは容易でしたが、建物は常に便利な場所にあったわけではありません。例えば辺ぴなところあった乳児院は、新しいデイセンターに容易に転換することができませんでした。
バーナードスが幸運だったのは、非常に多くの資金を持つ人が理事であったということです。彼らは必要なくなった建物は売却して新しい目的のために資金を使いなさいと言ってくれました。そこで、私たちもそのような方針を採択できたのです。もちろん寄贈者の名前は、次の建物にも付けさせていただくことで同意を得ることができました。

◇ 資金調達の困難

私たちが直面した困難の最後は、資金調達の問題でした。これについてはバーナードスの経験ではなく、いま私たちがルーモスで直面している問題について触れたいと思います。
バーナードスでは1つの機能から別の機能への資金の移動というのは比較的容易でした。単一の組織でしたし、経営者そして理事としては、例えば乳児院にもう資金をつけない、そしてデイセンターやファミリーサポートセンターに資金を移すという意思決定を容易にすることができました。
しかしルーモスでは、政府や公的機関あるいは自治体と仕事をする場合、なかなかそうはいかないとことがわかってきました。例えば、厚生省の管轄にある乳児院の運営資金を、社会福祉省が管轄である家庭へのサポートサービスに使うということができなかったのです。政府の省庁間では、資金の移動がなかなか容易ではないということです。子どものために、別の目的で使いたいと思っても、それが障壁となって、施設ベースのケアから地域社会ベースのケアへの移行が妨げられてきたのです。

◇ 脱施設化プログラムの成功のために

ベストな脱施設化を実現するポイントについて触れて行きたいと思います。ルーモスで経験したのは、政府と協力して脱施設化を成功させるには何が重要なのかということです。
まずよいプランニングが重要です。理想的には、このプランニングにあたってすべての関係者がかかわることです。また政府がすべての段階で常にコミットメントをしていくことが重要です。施設を閉鎖する日を設定してしまうのではなく、子どもにとって最善の利益を常に中心において、現実的なタイムテーブルで日程を組むことも重要です。
全てのプログラムにおいて、子どの最善の利益を中心とするためには、計画を立てる人たちが、何が最善の利益であるかを知っていることが前提となります。脱施設化を成功させるための主要な鍵となるのは、子ども一人ひとりのニーズと、家族や地域社会にどのようなリソースがあり、どのような可能性があるかという慎重なアセスメントです。単に子どもを家庭に返す、養子縁組をする、里親に任せるだけで適切な監督もサポートもなければ、破局という結果を迎えてしまいます。
子ども、そして若い人たちの意見を取り入れるということは成功するために重要だと思います。これまで施設での生活しか知らない子ども達は、これから未知の生活が始まるわけですから、恐れを抱いています。子ども達を注意深く見守り、新生活への準備をする、そしてそれは、子どもが信頼する大人がかかわって準備することが大事です。
ルーモスではいくつかのテキストを作りました。より年齢の高い子どものために、新生活への準備、手立てとなるような内容です。ルーモスのWebサイトでも公開されております。一度ご覧ください。

ルーモスのホームページ
https://wearelumos.org/
英国視察報告書はこちら
ルーモスプログラム参加など英国視察報告

■どのようなサービスが必要とされているか?
・ユニバーサルな医療、教育、社会福祉サービス
・弱い立場の子どもと家庭を対象としたサービス
・要となるところにサービスを配置する(例:産院)
・予防/家族再統合
・緊急保護
・家庭でのケア 里親制度と養子縁組制度
・極めて少数のマイノリティー児童を対象とした小規模で特別な養護施設
・社会的養護を終了するときの支援
・社会的養護の後の支援サービスここにリストアップしているのは、子ども達が入所しても、退所しても、必要になるサービスです。「こんなにあるのか」と思わないでください。理想的にはこれだけ欲しいということです。そしてみなさんの場合には、「これはできない」「現在はない」というサービスがあると思いますが、だからと言って心配しないでください。

 

◇ 資源の再投資について

先ほど、資金の移動がサービスを切り替える時に難しいと申し上げました。施設は3種類の資源を持っています。まず資金(お金)、人材、そして物質的なものです。戦略的な計画立案にあたって、これまで施設に投下していた資金を維持したまま、コミュニティにおけるサービス、中でも子ども達が本当に必要とするサービスに資金を投入しなくてはなりません。コストについては、特別な支援が必要な子どもを含めて、コミュニティや家族でケアするほうが施設よりもコストが低いということがわかっています。
もちろん個々のサービスによって高くなったり、より安価になったりしますが、全体として家族・地域ケアの方がコストは下がるということです。
また社会政策を大きく変えるわけですから、独立したモニタリングと評価が必要になります。そのプログラムが成功したかどうかという尺度は、この退所した子どもの数、あるいは閉鎖した施設の数ではありません。子どもにとってその変化がプラスになったかどうかで判断されるべきだと思います。そして財政的にそのプログラムが持続可能であるかどうかとうことも重要でしょう。

◇ 経験から得られた教訓

最後に私たちの学んだ教訓です。私の立場から日本の皆さんにこれをしなさい、あれをしなさいというつもりは一切ございません。ただここで私たちがバーナードスで学んだこと、そして現在ルーモスを通して世界各国で学んでいることを教訓として皆さんにお伝えしたいと思います。
というのも、これから改正された児童福祉法を施行するにあたって、ぜひとも私たちの過ちを知っていただきたいのです。「私たちが過去に遡れるのなら、もっと違うやり方をするのに」というポイントをお伝えいたします。

■施設入所は早く中止すべき

まず、もっと早く乳児院への入所を中止すべきであったと考えています。例えば、バスタブを空にしたいのであれば、まず蛇口を閉めなければいけません。しかし振り返ると、二つの要因があって、早く入所を中止できませんでした。
一つは、家族サポートのサービスが当時はなかったことです。特に虐待が疑われるケースについてはそうでした。乳児院を閉鎖したいということと、そしてバーナードスにしろ、政府にしろ、必要な地域でのサービスをどれだけ提供できるかというバランスを取るのが難しかった。
もう一つ、私たちはシニアの小児科医の意見を聞きすぎたのかもしれません。彼らは「障害児は施設ケアをすべきだ」という強い意見がありました。なぜ私たちが意見を通せなかったというと、地域社会に必要な設備がなかったからです。住居を改修して車椅子でも暮らせるようなサービスもありませんでした。トイレ、浴室の改修なども当時は行われておりませんでした。また重度の障害のある子どもの親のレスパイトや里親ケアもありませんでした。こうした要因のため、なかなか乳児院閉鎖を進めることができずに時間がかかりました。

■断片的な導入を避ける

バーナードスでもルーモスでも、もっと一貫性のある戦略的計画をたてる必要があったと思っています。そのためにはどんな要素が必要かということを申し上げました。振り返ると、どうしても断片的なアプローチの方がやり易いのだと思います。関与するスタッフの考え方や、地域の政治家やマネージャーの熱心さに左右されたり、退所させやすい子どもから退所させたりするような傾向は、計画が進んでいるように見えるので、そうしやすいのです。

■小規模施設の問題

ルーモスの経験から、ヨーロッパのいくつかの国では脱施設化を進めるためにEUから資金が出ている場合があります。それはいいのですが、残念なことにその資金の使われ方があまりよくありません。
ある国の例です。大規模な古い施設の替わりに、新しく小規模な施設を作った国がありました。きれいな建物、壁には絵も飾ってあります。こういった新しい施設には30名、40名の子ども達が入所しています。しかし、いくら小規模にしてもいわゆる“施設的な特徴”が消えなかったのです。政策立案者は確かに「より小さなホームが必要だ」と言う声には応えました。しかし、小規模ホームが必要となるのはごくわずかの家族がケアをする力がないような子ども達、あるいは子どもに障害がある、問題行動があって家庭でのケアが難しい子に限られる、という声は見逃していたのです。
したがって小規模ホーム(施設)が受け皿になった分、養子縁組をしなかった、里親ケアをしなかったということになります。今後また小規模ホームからの脱施設化が必要となります。結局その期間、入所した子どもが受けられたはずの家庭におけるケアを受けられなかったことになります。

■専門職の抵抗・適切な財政モデル

先ほども専門職の方々の抵抗について述べましたが、これにもっと早く対処すべきだったと思います。シニアの小児科医の先生方というのは非常に知的レベルの高い方々です。したがって、研究で判明した結果をきちんと提示すれば、検討していただけたのではないかと思います。脱施設化というイデオロギーで説得するのではなく、研究の結果を示し、それを使って説得する努力が必要だったと思います。
また公的サービスに関しては、部門ごとに予算が付きますので、子どもが必要とするケアの種類が変わった時に部門が違うと資金の移転が難しくなってしまいました。

■関係者全員についてのメリットを強調する

はっきりと教訓として出てきているのは、戦略的なアプローチを取り、サービスのあり方を施設ケアモデルから家庭ケアベースに変えなければいけません。そのために、関連する人たちがすべて参加する必要があるのです。保健部門、社会福祉、教育、そして住まいに係わる人たちが、必ずかかわる必要があります。
その戦略的なアプローチを取る際の主要な要素は、資金・資源の移動が、子ども達個人のニーズに合わせることができる財政モデルを作ることです。
どのようなプログラムであっても、脱施設化を進めるためには、前向きのはっきりとした熱意を示すリーダーシップと、問題や課題を前向きに解決していこうというアプローチが必要になります。そして子どもにとって最善なことは何か、ということを常に考えていくことが大切でしょう。ご清聴いただきましてありがとうございました。日本での成功を願っています。
(構成:林口ユキ)

【関連リンク】

政治山の記事はこちら
2017.4.25 政治山「すべての子どもに家庭を」バーナードス前CEOロジャー・シングルトン卿に聞く
GLOBEの記事はこちら
2016.12.30 朝日新聞GLOBE ロジャー・シングルトン卿×GLOBE副編集長・後藤絵里対談
日本財団ハッピーゆりかごプロジェクト 関連記事
日本こども虐待防止学会で日本財団スポンサードセッションを行いました!

【ロジャー・シングルトン氏 発表資料】

日本語版「子どもが家庭で育つ社会にむけて」

英語版 “Toward a society where children are raised at home”

2017.04.27 更新

「子どもが家庭で育つ社会に向けて」ロジャー・シングルトン卿 講演 その①【NEW】

日本子ども虐待防止学会 第22回学術集会 おおさか大会

2016年11月25日

日本財団 スポンサードセッション
「子どもが家庭で育つ社会に向けて」

英国 バーナードス元代表(CEO)ロジャー・シングルトン卿

私はこれまで、英国の児童虐待防止学会や国際会議などで話しをする機会がありましたが、こうした関連する分野の各専門職の方々が一堂に会する場でお話をさせていいただくことは、とても重要だと思っております。「弱い立場の子ども達の施設入所をどうすれば減らせるのか」ということについて、想像力とご関心をお持ちいだいたこと、私が日本に訪問できる機会をくださったことに感謝申し上げます。

 ◇ バーナードスとルーモスでの2つの経験

これから、私が経験した2つの組織についてお話をさせていただきます。
1つは、英国のNGOであるバーナードスでの経験です。もともと、入所施設での子ども達へのケアを提供していた組織から、家庭、里親家庭で、養子縁組というかたちで子ども達を支援することに姿を変えていきました。
2つ目は、もう一つの英国のNGOであるルーモスでの経験です。バーナードスでの経験は歴史的な部分もありますので、いま現在のルーモスでの経験も合わせてお伝えします。また、他の国でどのような取り組みがなされているかもご紹介します。
実は数カ月前に、日本財団とルーモスは数名の日本の国会議員の方々と児童相談所職員を対象とした英国視察研修を企画しました。そのとき私たちは、日本の国会で児童福祉法改正を検討中であったことを知りました。「家庭養育を原則とする」という改正です。そして、2016年5月27日、その法律が成立したとお聞きしました。この重要な法改正が、弱い立場の子ども達のためになりますように。そして、これから皆さまにお伝えする私の経験が、この法律を実施していくための役に立つことを願います。

バーナードスとルーモスの日本語訳はこちらから
バーナドスとルーモス.pdf

◇ 100年を経て脱施設化したバーナードス

まず、この二つの組織についてご紹介いたします。
バーナードスは1866年、当時医学生であったトーマス・ジョン・バーナードが創設いたしました。彼はダブリン生まれで、医療伝道師となるべく世界を旅しようとロンドンに向かいました。ところが、ロンドンでは厳しい路上生活を強いられている子ども達を目の当たりにし、愕然としたのです。彼は予定していた中国に行くのを止め、路上での生活を余儀なくされている子ども達を助ける組織を創設しました。そして、そのための施設を作り、子どものケアをし、教育・職業訓練も受けることができるようにしたのです。
バーナードは家庭での子どものサポートが重要であると信じていましたし、初期には里親養育も推進しましたが、この段階では主に入所型の施設ケアを行いました。当時は名称も「バーナードスホーム」でした。それがこの組織の最初の100年間でした。
1974年、私はバーナードスにディレクターとして入りました。そして1983年には代表に就任いたしました。その頃までには、この組織は乳児院を閉鎖していくことを決めていました。さらに、より年長児童向けの入所施設の閉鎖も決定していました。しかし、閉鎖へ向けたプロセスは始まったばかりで、私自身もまだ何百棟もあった施設の運営に携わっておりました。
ここで重要なのはバーナードスがNGOであったことです。NGOは自らの意思決定をすることが許されており、何をどのようにするか決めることができたので、政府や自治体からの制約を受けるということはありませんでした。
一方、続いてお話しするルーモスという組織は、政府と一緒になって、政府がすすめる脱施設化のプログラムを後押しする立場にあります。

バーナードホームのホームページ
http://www.barnardos.org.uk/what_we_do/our_history/history_faqs.htm

◇ JK・ローリングが創設したルーモス

ルーモスは設立約10年の組織で、その創設者は児童文学者のJK・ローリングです。ハリー・ポッターの作者としてご存知の方は多いと思います。10年ほど前、JKローリングは施設に入所している子ども達が、ひどい状況で暮らしている現実を東ヨーロッパで目にしました。それは、子ども達が檻のようなベッドに入れられ、ろくに食べさせてもらえず、トイレにもきちんと連れていってもらえず、放置、虐待されていた姿でした。
そこで彼女は決めたのです。「何か行動を起こさなくては」と。そして、私と1、2名の人と共に動き始め、そこからルーモスが設立されました。ちなみに、ハリー・ポッターファンではない方のために申しますと、ルーモスというのはローリングがハリー・ポッターにおいて作り出した呪文、暗くて怖い所に光をもたらす呪文です。
ルーモスは現在、政府、NGO、財団などと共に仕事をし、不必要な施設養護に終止符を打つための仕事をしています。「施設での悲惨な状況を改善したい」という願いで設立されたので、できるだけ施設は利用せず、家庭での養育を推進することに軸足を置いて運営されています。
では、施設ケアの利用をどのようにして削減できたのか、特に乳幼児向けの施設の利用がどう削減されていったのか、お話をしていきます。そして、家庭復帰における課題は何であったか、里親家庭や養子受け入れ家庭を探すことにどのような課題あったかという話の中で、バーナードスとルーモスの経験を交え、脱施設化にはどのようなプログラムが必要なのか、最後にわれわれが学んだ教訓についてお伝えしたいと思います。

ルーモスのホームページ
https://wearelumos.org/

◇ ジョン・ボウルビィの研究

第二次世界大戦後、日本同様、英国も大々的な復興プログラムに取り組まねばなりませんでした。子どもに関する分野では、WHO(世界保健機関)に依頼されて出されたジョン・ボウルビィの報告書が大きな影響を与えました。
そこには、子どもが母親の愛情を受けることができなかった場合に、その子どもの精神衛生、人格形成に大きな影響があるということが述べられていました。彼は、特に子どもが母親のケアを失った年齢とその期間が長期化することで、より影響が大きいことに着目していました。
ボウルビィは他の著名な人たちの研究にも言及しました。そして施設で養護されている幼児は、一般家庭の子どもに比べて、例えば「人の顔を見て笑うことができない」「刺激にうまく反応することができない」「栄養は整っているのに食欲がない」「体重が増えない」「不眠」「積極性に欠ける」というような状態がみられることを示したのです。
この研究から生まれたのが、サイコロジー(心理学)、ソーシャルワークといったものでした。これらの専門職を養成するコースは、ボウルビィの研究の重要性を鑑みて展開され、児童福祉のリーダー的な人たちの指針となりました。子どもの良き発達は、施設ケアの利用とは比例しないこと、それが特に幼い子ども達で顕著であるとわかったのです。
しかしながら、バーナードはこの新しい考え方をすぐには受け入れませんでした。それまで乳児院に多大な投資をしてきましたし、その中で働くスタッフのトレーニングにも力を注いできました。毎年、何百人もの若い女性が、保育師の資格を持ち、子どものための施設で仕事をしてきました。また質の高いスタッフを輩出すると評判も高く、乳児院としては最高のものとして受けとめられていたからです。

◇ 当時の乳児院の子どもの様子

ここでビデオをご覧いただきます。当時のバーナードホーム、乳児院の状況です。おかしなことに “ベビーズキャッスル”とも呼ばれておりましたが、それはなぜか、見ていただければおわかりになると思います。サイレントフィルムでナレーションはありませんが、バーナードスが資金調達のために作ったものです。1951年の状況において、ケアの質がどれだけ高かったのかということがおわかりいただけると思います。(動画上映)

バーナードホーム動画

いかがでしたでしょうか? ご覧いただいたように、充分な食べ物も与えられ、きれいな服を着せられ、とても優しく扱われています。ただ、子ども達の顔を見ると、あまり笑顔がなかったということにお気づきかもしれません。これは研究者も認識したことで、うれしい、楽しいという表現ができていないのです。
しかし、バーナードは新しく入ってきたスタッフからの、「施設入所という方針を検討し直さなくてはならない」というプレッシャーを感じ始めていました。
なぜなら、乳児院の子ども達の様子は、大人になかなかなつかなかったり、自己主張が強かったり、あるいはより未熟な行動に出たり、言葉の発達が遅れたりしていることがわかってきたからです。また、施設にいる子ども達を担当する人数は、子ども1人に大人が平均24.4人もいました。新しく訓練を受けた学生たちがどんどん実務に入ってくるため、数が増えるのです。これが家庭ならば平均2.2人で行われているのと比較すると、非常に多かったわけです。食事はしっかり与えられますが、毎日違うナースが子どもに食べ物を与えている。子どもにとっての“大好きな人”を作らないための処置でした。これではボウルビィの研究と相反します。
ボウルビィが前提としたのは、「幼児の健全なメンタルヘルスは、温かく親密かつ継続的な関係を母親あるいは母親代わりの人との間で構築する必要があり、それは一人に限る」ということでした。

◇ 世界の国々における研究および調査

ボウルビィの発表以降、施設入所が乳幼児にいかに影響するかという研究が様々な国でなされました。
2003年のギリシャの調査では、養育者に対する無秩序型(一貫性のない行動パターンを示す)の愛着が見られるのは、施設ケアを受けている場合は66%、一方で自分の家族に育てられて保育園に通っている場合には25%でした。
2007年のルーマニアの研究では、4歳半までの子ども達の認知能力が、長く入所していた子どもの方が、一度も入所したことがない、あるいは施設ケアから里親ケアに移行した子どもに比べて、かなり悪かったということです。
2010年の韓国での研究は、2歳まで施設入所している場合は、行動発達がよくないことが明らかになりました。
2012年ポルトガルの研究では、11ヶ月から3歳の子どもで施設に入所している子どもに高い割合の愛着障害が見られることがわかりました。

「子どもが家庭で育つ社会に向けて」ロジャー・シングルトン卿 講演 その②へ

「子どもが家庭で育つ社会に向けて」ロジャー・シングルトン卿 講演 その③へ

 

【ロジャー・シングルトン氏 発表資料】

日本語版「子どもが家庭で育つ社会にむけて」

英語版 “Toward a society where children are raised at home”

 

2017.04.21 更新

報告書 LUMOSプログラム参加など英国視察報告

日本財団では2016年2月及び7月に社会的養護の推進のため、英国を視察しました。このたび、報告書を作成しましたのでお知らせいたします。

目次

Ⅰ.はじめに:英国と日本の社会的養護の現状

Ⅱ.LUMOSによるプログラム

Ⅲ.エセックス県における里親支援の現状

Ⅳ.児童福祉審判に関わる判事からの聞き取り

Ⅴ.おわりに

 

報告書(PDFファイル)のダウンロードはこちらから

英国視察報告書pdf